会津藩四藩境への防備体制強化
〈松平容保、米沢藩使者と面談〉
三月二十三日(4月15日)米沢藩は既に仙台藩と会談し、相約束し会津藩に降伏勧告の使者を出す。二十四日(4月16日)出立し既に若松に入っていた仙台藩士らと共に二十五日(4月17日)若松にて談合を重ねている。そして、二十七日会津藩士と面談し、二十八日に登城し松平容保・喜徳に拝謁している。
(この会津藩救解に関する件は、この後も幾度もあり会津戊辰戦争(八)の奥羽越戊列藩に詳述する)
松平容保はこの使者の来訪が、余程嬉しかったのか自ら謁し使者を(木滑要人参政)しきりに近くに呼び面談している。さらに「濃 州 白鞘」の脇差を与えているのである。
本丸・奥御殿の庭跡 2006年6月18日撮影
※天守閣への登閣二千万人を記念に出版された鶴ヶ城の冊子である。平成四年(1992年)に発行された。

〈人事の刷新、藩四境防備体制を改める〉
一方、人事の改革も今までの重職を残したが、若手の登用も多く各方面に中隊長として出陣した者の中にも登用された藩士もある。
〈家老〉(執政、参政とも呼ばれ格付けはあった)
田中土佐(49才)西郷頼母(39才)萱野権兵衛(39才)
梶原平馬(27才)内藤介右衛門(30才)一瀬要人(37才)
諏訪伊助(39才)上田学大輔(未詳)神保内蔵助(53才)
原田対馬(未詳)山川大蔵(24才)海老名群治(26才)
後に「越後の戦い」から呼び戻された佐川官兵衛(38才)
〈若年寄〉横山主悦(23才)倉沢右兵衛(44才)手代木直右衛門(43才)
西郷勇左衛門(57才)井深茂右衛門・田中源之進・上田八郎右衛門・萱野右兵衛(いずれも年令不詳)
らが「藩政」の新布陣となっていく。
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三月十二日(4月4日)「藩四境防備体制」を改めた。
(1)津川(越後口)木村隊、諏訪隊
(2)浜崎( )堀隊、蜷川隊
(3)三代(白河口方面)横山隊、鈴木隊
(4)田島(日光口方面)原隊、有賀隊
さらに「軍事方」は周辺各地に「鎮撫隊」の派遣を通告した。十二日「番頭勤三奉行」の萱野右兵衛は約二百五十余人を率いて、越後の水原陣屋(六万石)の奉行として出陣する。十四日(4月6日)には砲兵隊、組頭大沼浄之助(城之助)が二隊を率いて「日光口」へ出陣。本丸の大書院に於いて容保からカツオ節を賜っての出陣であった。隊長の山川大蔵は三月二十一日(4月13日)「若年寄」に任じられ呼び戻されている。十七日(4月9日)前日「越後・酒屋」出張を命じられた朱雀二番寄合組隊長・土屋総蔵は容保に拝謁し「前新発田藩主・溝口直溥」の国元までの警護を命じられ十八日出陣。
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このように藩境防備の出陣が相次いでいく。(各方面に「戊辰戦争」に記述してあるので参照)
〈本丸・茶壷櫓跡〉
本丸南東に建っていた。城内には十一の櫓が建っていたという。
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〈説明文〉〈茶壷櫓〉
櫓内には常に貴重な茶器類がおさめられていたので、この名がある。更に武器の収容をも目的とした二重の塗込櫓であった。茶壷櫓の西側の本丸奥御殿内には、茶室「麟閣」が建てられていた。この櫓は御弓櫓と共に本丸の旧大手口に通じる廊下橋の横矢掛けりとしても貴重な櫓であった。北側の石垣は高さ二十九メートル余で、城内では最も高く美しい扇勾配をなし「忍者落とし」ともいわれている。
2002年8月10日撮影
〈藩四境防備体制を強化〉
西軍の「大総督府」は西国諸藩を次々恭順させ、その証として「軍資金」「兵糧」「出兵」の調達を進め、いよいよ「東国諸藩」「奥羽諸藩」へと侵軍すべき
(1)東海道(2)北陸道(3)東山道(4)奥羽
と鎮撫総督府の出立を開始していた。三月下旬頃には(1)は駿府まで、(2)は越後・高田、(3)は江戸郭外近くまで進み、(4)の奥羽・会津侵軍は、まず枝葉の諸藩を恭順させ「会津追討」の作戦であった。
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二月二十六日(3月19日)「奥羽鎮撫総督府」を設け、出陣を命じる。三月二日(3月25日)仙台藩(京都詰)を教導に薩摩・長州・筑前藩を京都を出立させ、十日に大阪・天保山沖から船で出航し、三月十七日(4月9日)に仙台港に入港、十九日仙台城下へ、そして二十日には仙台藩にも会津追討の命令を出した。
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そんな情勢が刻々と会津若松城にも届く。松平容保は「謹慎」するも、手をこまねいている事もできず、「武備恭順」を守りながら、武備も着々と進めていった。
〈奥羽に戦雲たれ始める〉
「奥羽鎮撫総督府」が仙台城下に着陣してから「奥羽」に戦雲が少しずつ、確実にたれ始め出した。
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その前に、会津藩の動向を松平容保帰国から追ってきたが、前将軍徳川慶喜のただひたすら「恭順・謹慎」に納得がいかず、また「登城禁止」された主戦論者も恭順をよしとせず、会津をめざして来援する藩士、諸隊が後を立たなかった。
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次項よりそれらの動勢を追っていくことにする。
資料=本宮町史(2)近世編
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